フィナステリドとは
飲み薬として世界初のAGA治療薬として2005年に日本で発売されたプロペシア(一般名・フィナステリド)の特許は2015年に満了を迎えました。これに伴い、各社から同じ有効成分をもつジェネリック薬(後発薬)が発売されました。ジェネリック薬は先発薬の有効成分の名前(一般名)を名乗らなくてはならないため、「フィナステリド」のあとに製薬会社の名前がついた形で製造発売されます。膨大な開発費用がかかった先発薬に比べ製造コストを抑えられるため、手に入りやすい価格になっています。AGA治療は年単位で行われるものですから、ジェネリック薬を選択することで治療の費用を抑えることができるようにもなりました。日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドラインでも、フィナステリドはAGA治療において強く推奨されています。
フィナステリド早わかり表
有効成分 | フィナステリド(0.2mg・1mg) |
服用方法 | 1錠/1日(等間隔が理想) |
効果発現 | 効果の判定まで少なくとも連続6ヶ月間の服用を要する |
副作用 | 性欲減退(1~5%未満)・勃起不全、射精障害 (1%未満)、睾丸痛・精液の質低下、γ-GPT値上昇、乳房圧痛ほか(それぞれ頻度不明) |
併用禁忌薬 | なし |
食事の影響 | なし |
禁忌事項(女性・未成年者) | 女性(特に妊娠の可能性のある、または授乳中)と小児は、服用できない。また、割った錠剤に触れない。 |
禁忌事項(献血) | 服用中止後、1ヶ月以上を経過するまで献血してはならない |
ドーピング剤リスト | 2023年度禁止表に掲載なし |
AGAの原因
AGA(男性型脱毛症)の主な原因物質は*DHT:ジヒドロテストステロンです。AGAに悩む男性は、頭頂部や額の生え際に通常より多くのDHTが産生されます。このDHTが毛乳頭細胞と結合すると、毛髪の成長が妨げられ(髪の毛の成長周期:*ヘアサイクルが短くなり)その結果、徐々にうす毛が進行します。AGAは進行性で、治療を行わずに自然治癒することはありません。
*DHTは胎児期には男性器の正しい形成に欠かせない重要な働きを持ちますが、思春期以降はAGAや前立腺肥大など、好ましくない作用を及ぼすことがあります。
健康な方のヘアサイクル
健康な人の髪の毛は3~5年の周期(ヘアサイクル)で代わる代わる生え変わり、常に一定の毛量が保たれます。
AGAの方のヘアサイクル
AGAに罹患した方の頭皮ではその原因物質であるDHTが産生されます。これにより髪の毛のヘアサイクルが徐々に短くなります。正常より短いヘアサイクルを持つ髪の毛の割合が増え、それに伴って毛量も減ってゆきます。
フィナステリドの作用機序
フィナステリドは、AGAの原因となる物質DHTの生成に必要な5α還元酵素を阻害することでDHTの生成を抑えます。この結果、うす毛の進行が抑制されることになります。この薬は作用機序から5α還元酵素阻害剤と呼ばれます。
フィナステリドでAGA治療中
プロペシア(有効成分フィナステリド)はAGAの原因物質DHTを発生させる5αリダクターゼの働きを阻害します。ヘアサイクルが短くなる要因が取り除かれ、健康な状態のヘアサイクルを保つ髪の毛が徐々に増えます。結果、うす毛が改善します。
フィナステリドの飲み方
毎日1錠を服用して下さい。服用する時間帯や食事のタイミングは時に制約はありません。ただし、服用の間隔をなるべく一定に保つため、また習慣となるよう、ご自身に都合の良いタイミングを決めておきましょう。プロペシアは長い期間飲む薬です。一日飲み忘れたからといって次の日に2錠飲む必要はありません。一日忘れただけで直ちに効果に影響が及ぶわけではありません。あわてず毎日1錠の服用をそのまま続けて下さい。*当クリニックでは1mgのプロペシアを処方しています。
効いたかどうかを確認するには
毎日服用し効いている場合、早い方で約3ヶ月、一般的にはおよそ6ヶ月で脱毛の進行が止まって、増え始めます。ドライヤーで髪の毛を触っているときに、以前より髪の毛のコシが強まったと感じられることで、効果を実感されることがあるようです。万が一6ヶ月以上服用しても効果が感じられない場合、服用の中止がすすめることがあります。ただし使用者の年代が比較的若い場合、1年以上の服用で効果が現れ始めることもあるので、継続的な使用を医師と相談して下さい。
フィナステリド一覧
日本国内で利用できるフィナステリドのうち、当クリニックでは3社を扱っています。
製薬会社 | 錠剤外観 | |
フィナステリド「トーワ」 | 東和薬品 | |
フィナステリド「TCK」 | 辰巳化学 | |
フィナステリド「VTRS」 | ヴィアトリス *旧ファイザー | |
*以上、当クリニック扱いあり | ||
*ほか、沢井製薬、富士化学、クラシエ、シオノケミカル、武田テバ、江州製薬 |
フィナステリドの副作用
主な副作用にED・勃起不全(1%未満)や性欲減退(1〜5%未満)が発生することがあります。もし起きても程度は比較的軽いものですが、この場合ED治療薬との併用の使用を含めて、フィナステリド服用の継続を医師と検討して下さい。また、精液量減少、精液の質低下(いずれも頻度不明)がありますので、子供をつくる計画がある方は、念のため服用の中止をすすめることがあります。
発生部位 | 主症状 |
生殖器 | 性欲減退、勃起不全、睾丸痛など |
肝臓 | γ-GPT値の上昇ほか |
その他 | 乳房圧痛ほか |
いずれも発生頻度は低く、たいていの方は問題なく服用が続けられますが、少しでも気になることがありましたら医師に相談して下さい。
アレルギー反応
ごく稀に、飲んだ後しばらくして、錠剤中の成分に対するアレルギー反応(皮膚のかゆみや蕁麻疹など)が現れることがあります。この場合すぐに服用を中止し、医師に相談して下さい。
処方について
医師が診察のあと、先発薬プロペシアかフィナステリドの処方を行います。初診料・診察料はかかりません。オンライン診察では所要時間10分程度です。現在の健康状態を確認しますので、使用中の薬があればもらざす報告して下さい。処方量が多いので、常に最新のロットの在庫があります。有効期限は約2年で、1年分まとめると割引が適用されます。(12ヶ月分の価格で13ヶ月分処方)
外用薬など他のAGA治療薬
AGAの原因となる物質DHTの生成に必要な5α還元酵素には、主に頭皮に存在するⅡ型と、全身に存在するⅠ型があります。フィナステリド(プロペシア)はⅡ型に対して、次の世代のAGA治療薬デュタステリド(ザガーロ)はⅠ・Ⅱの両方の型に対して、その生成を抑えます。また、外用薬のミノキシジルは毛包周囲の毛細血管を活性化させて増毛を促します。(内用薬のミノキシジルは日本で未認可です)。もうひとつの外用薬カルプロニウム塩化物も、頭皮の毛細血管を拡張させることで毛髪の成長を助けます。
ザガーロほか | ミノキシジル外用薬ほか |
内用薬どうしの併用はできませんが、内容・外用薬の併用はより一層の効果が期待できます。
フィナステリドの歴史
世界初の経口AGA治療薬として、日本では2005年に万有製薬(現オルガノン)発売されたプロペシアの特許が2015年で終了を迎えました。これに伴って、ファイザー(現ヴィアトリス)製薬を皮切りに各社からプロペシアのジェネリック(後発薬)としてフィナステリドが発売されます。プロペシアもそのジェネリックも効能について違いは基本的にはありません。違いは錠剤を形づくる基材などの成分や自身の好みだけですので、どの製薬会社のものを選ぶかは医師とご相談下さい。
女性男性型脱毛症につての適用
女性のうす毛は生活習慣の乱れや加齢などでホルモンのバランスが崩れ、女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると髪の毛の成長期が短くなり、うす毛がゆっくりと進行します。また大抵の男性と異なり、髪の毛を縛ったり、毛染めやパーマなど、外部からの要因でうす毛が進行している場合もあります。男性ホルモンの派生物質DHTが原因で起こり、頭頂部やおでこから薄くなる男性型脱毛症AGAとは異なり、髪の毛の分け目から全体的に密度が低くなるのが特徴です。(びまん性と呼ばれます)うす毛の原因が異なるので、女性がミノキシジルを服用しても効果はないばかりか、副作用等のデメリットしかありません。女性のうす毛は、医師と原因を相談したうえで、ミノキシジル外用薬などで対処します。
フィナステリドについて注意事項
- 併用禁忌・併用注意薬はありません。ただし現在使用中の薬や、治療中の疾患があれば医師にお伝え下さい。
- フィナステリドは、特に妊娠中または妊娠の予定がある女性が触れてはいけません。胎児の男性器の形成に影響を及ぼすおそれがあるためです。錠剤は表面が固くコーティングされ丈夫につくられているため、通常の扱いの範囲であれば触れても問題ありません。しかい錠剤を割ったり、砕けたりした場合は有効成分に直接触れることになります。女性には不要のものですから、保管方法など取扱いに十分注意して下さい。
- フィナステリドを服用中の方は献血ができません。再開する場合は、薬を止めて1ヶ月以上経過する必要があります。輸血を受けた女性の体内に入った場合、胎児の男性器の形成に影響を与える可能性があるためです。
- 前立腺がんの検診を受ける予定のある方は、検査時にフィナステリドを使用していることを必ず申し出て下さい。フィナステリドは前立腺がん検査で測定されるPSA値を約50%低下させるため、申告がないと正確な判定ができません。
- フィナステリドはWADA(世界アンチ・ドーピング機関)の禁止薬剤のリストから外されています。現在はスポーツ競技を行う方も問題なく使用できます。検査技術の進歩の結果、フィナステリドの使用が筋肉増強剤などの検出に影響を受けなくなった経緯があります。
フィナステリドの偽物、未承認薬に注意
本来は医師が診察を行う「処方薬」のフィナステリドがネットショッピングできるかのようなサイトがあふれています。それらの殆どは海外製品や偽造された薬品を「使用者本人の責任」で輸入の代行を行うだけのかたちをとっています。この状況は厚生労働省や製薬会社も正確な状況を追いきれていません。AGA治療薬は長期的に使用する薬なので、もし事故があった場合の影響も大きくなる可能性があります。日本での未承認薬、偽造薬で被害があっても、「医薬品副作用被害救済制度(PDMA)」の対象とはならず、薬剤が原因の健康被害への給付金を受け取ることはできません。処方薬は医療機関で、医師の指導下で使用しましょう。
*国内未認可のAGA薬名の一例
フィンペシア フィナックス フィナロ プロスカルピン フィライド フィンサバ フィナロイド ハリフィン エフペシア フィナバルド フィンカー |
フィナステリド ほかAGA治療薬のオンライン処方